慎重に検討を重ねた結果、
集合場所はブリテンの宿屋を選んだ。
誰もが集まりやすく、それでいて人の目を避けられる場所。
あたいは2階の奥の部屋を貸し切り、
ブリタニア各地から集まる隊員たちを待った。



「おはようございます」「こんばんわー」
挨拶が噛み合ってないように見えるが、
これは実は合言葉なのである。
今回の任務で初めて顔をあわせる隊員も多い。
本当に味方なのか。
古代龍の手下が人間の姿で紛れ込んでくることだって考えられる。
絶対に怪しい者を内部に入れるわけにはいかない。



今回の任務は隠密行動が鉄則である。
人の目を引く行動など論外だ。

白熊を集めて古代龍を倒す。
異質な任務である。周りからの妨害もあるだろう。
なるべく目立たぬように、迅速に任務を遂行せねばならない。

「集合場所が遠くからでもすぐ分かった」
という隊員からの指摘もあったが、
そこまで心配する必要は無いだろう。
まさか我々が白熊部隊のメンバーだとは誰も気付くまい。



あたいの作戦はいつでも完璧なのだ。





嬉しいことに、調教師の資格がない隊員も駆けつけてくれた。
たとえ白熊を指揮できないとしても、
その胸の内に燃える熱い想いに違いなどあろうか。



第1回、第2回と、
全ての任務で参加しているRyu-z隊員。
「下半身担当」と言う彼の言葉の裏には、
我々白熊部隊の足となり、
どんなに危険な地雷原にでも真っ先に飛び込んで行こう。
という、彼の決意が感じられる。
あたいも良い部下を持ったものだ。



緊張のあまり自分の名前を間違えてしまった。
まずい。隊員たちが動揺してしまう。
一瞬ヒヤリとしたが、
次の瞬間、隊員たちから笑い声が漏れる。
場を和ませるためのジョークだと思われたようだ。
白熊部隊の隊長たる者は、運すらも味方につける。そういうことだ。





Amber副隊長。
今回の任務では彼女があたいをサポートしてくれる。

隊員たちのゲート輸送。
遅れてきた隊員への対応。
興奮状態に陥った隊員のカウンセリング、など。
彼女の完璧なサポートがあればこそ、
あたいは打倒古代龍への細かな作戦に集中できるのだ。



こうして白熊と話をするのも久しぶりだ。
その昔、古代龍を倒した白熊がいる、という伝説を、
彼らもよく知っていた。
偉大な彼らの先祖を必要以上に賛美してやると、
INTの低い彼らは大喜びであたいの後をついてきた。
ちょろいもんである。

この日、ディシート島から白熊の姿が消えた。



作戦本部に戻ると、そこは桃源郷だった。
それこそ軍隊のように一糸乱れず整列する白熊部隊。
待ち望んでいたあの日の戦いの続きが、
今まさに始まろうとしている。

よく見ると色の違う白熊がいる。
隊員自身も白熊に変身しているのだ。
「1匹でも多くの白熊を集めたい」
そういう強い意志を感じる。

勝てるかもしれない。
今頃になって急にドキドキしてくる。
あたいのCカップの胸が熱くなるのを感じた。



なんと84匹もの白熊が集まった。
もちろん過去最高の数である。
ペットスロット制が導入された後にもかかわらず、だ。



隊員18名。白熊84匹。
あたいの予想を遙かに超える大所帯になった。
どう考えても負ける要素が見当たらない。
これで勝てなかったら、あたいは坊主になるしかない。
いや、ここにいる全員も坊主にしなければならない。
髪型変更券、足りるかな・・・

ぼんやり考えていると、
隊員たちが心配そうにあたいを見ていた。
おっと。いけない。
戦う前から負けることを考えているなんて、隊長として失格だな。

フッと笑うと、あたいはルーンブックをゆっくり開き、
第7サークルの集団転移魔法を唱えた。
長い夜になりそうだ。
待ってろよ。古代龍。